相性の良い資格として比較されがちな行政書士と社労士ですが、相性が良いだけにどちらを取得すべきか悩んでいるという人も多いようですね。
この記事では行政書士と社労士どちらを取るべきか悩んでいる人に向けて、どっちの資格を取ったらいいかを徹底比較します。
社労士と行政書士は取るならどっちがいい?
行政書士と社労士どちらを取るべきかで悩んでいる方のために、この記事では資格を取る時に重要な以下の3点を基に解説していきます。
比較ポイント
- 取得の難易度で比較
- 業務内容で比較
- 就職・転職のしやすさで比較
行政書士と社労士の違いは?
行政書士と社労士はどちらも士業という意味では同じですが、できる業務範囲が根本的に異なります。
行政書士と社労士の業務はどちらも一概には説明できませんが、簡単にまとめると以下のようになります。
行政書士:官公庁へ提出する書類や権利義務に関する書類の作成代行と提出
例、遺言や相続関係書類の作成、開業のための許認可申請書類の作成、契約書の作成、車庫証明の書類作成
社労士:社会保険や労務に関する書類の作成やコンサルタント業務
例:賃金台帳の作成、就業規則の作成、助成金の申請、労務等に関するコンサルタント業務
大きな違いは社労士の業務は企業を相手にする業務がメインなことに対して、行政書士は個人から企業まで幅広い層が顧客に業務を行えることです。
行政書士の場合は業務範囲が非常に広いため、業務の自由度や客層の広さという点では行政書士の方がメリットがあると思います。
しかし、一方で行政書士の業務はどれも基本的に単発依頼となることが多いです。
なぜなら、遺言や相続、許認可業務のどれもが一度完了してしまったら、どれだけ良い仕事をしたとしても引き続き同じ依頼を繰り返すことが基本はないからです。
もちろん、許認可業務などは店舗拡大などの際には、またお声がかかることがあります。
しかし、社労士はできる業務こそ行政書士に比べて限られますが、社会保険の手続きや労務の手続きというのは企業は必ず行わなければならない手続きで、社員の入退社の度に書類を作成しなければならないため、同じ企業から継続的な依頼が期待できるうえに、顧問契約にも結び付けやすいです。
やはり、継続的な依頼があるだけで、収入も安定しやすくなるという点は大きなメリットとなります。
行政書士と社労士はどっちが難易度が高い?
行政書士も社労士も国家資格であるため、試験の難易度としては高めです。
ですが、二つの試験は受験者数や合格率、試験科目などが大きく異なるため、難易度にも差があり、社労士の方が難易度が高いと感じる人が多いようです。
その理由を試験のデータを見ながら解説していきます
試験の難易度
・行政書士のデータ
資格の分類 | 資格の難易度 (10段階評価) |
試験日 | 合格発表 | |
国家資格 | 独占業務 | 6.5/10 | 11月初旬 | 1月下旬 |
・社労士のデータ
資格の分類 | 資格の難易度 (10段階評価) |
試験日 | 合格発表 | |
国家資格 | 独占業務 | 7.5/10 | 8月下旬 | 11月上旬 |
行政書士と社労士の試験の難易度を比較したところ、当サイトの基準では資格の難易度は社労士の方が高いと判断させて頂きました。
しかし、筆者もどちらの試験も受験して合格していますが、純粋な勉強の難易度的には比較が難しいくらいどちらも同じくらいの難易度だったと思います。それでも総合的には社労士の方が試験的にはハードルが高かったです。
これは行政書士と社労士はどちらが難しいかをダブルライセンスの方々に聞いたところ、やはりほとんどが社労士の方が難しいという回答でした。
なぜ、勉強内容的には同じくらいの難易度であるはずなのに、社労士の方が難しいと言われることが多いのかを纏めると、その理由は主に以下な意見になることが多いようです。
社労士試験の方が難しい理由
・合格ラインが相対評価であるため、運に左右されるところがある
社労士試験は合格基準が全体の受験生の得点で左右される相対評価と呼ばれる試験です。
それに対して行政書士試験は毎年合格基準が決められている絶対評価と呼ばれ試験のため、決められた合格点を取れば確実に合格ができるのに比べて、社労士試験はどんなに試験の出来がよくても全体の得点が高ければ合格基準も上がってしまう為、運次第でわずかに合格点に届かない受験生も多くいます。
・試験時間が長い
行政書士試験は午後から択一式が3時間なのに対して、社労士は選択式試験が10:30~11:50、択一式試験が13:20~16:50までと一日かけて行われる試験のため、集中力を維持するだけでも一つの課題となります。
・足切りが社労士は厳しい
社労士試験と行政書士試験ではどちらにも足切り制度があり、総合得点だけでなく科目ごとに定められた基準の得点に達しなかった場合はどれだけ総合得点が高かったとしても不合格となります。
しかし、行政書士試験の足切りは商法、民法、行政法などを総合して一定基準の得点を取れば良いため、得意な科目で補えるのに対して、
社労士試験は労働基準法や国民年金法など各科目でそれぞれに足切りの基準が設定されているため、全ての科目を一定水準以上の実力を身に付けならず、苦手な科目を得意な科目で補うことができなくなっています。
・他の資格と被っている科目の数が違う
これは行政書士試験の大きなメリットでもありますが、行政書士試験は人気の宅建試験やFP、司法書士などの試験科目と被っている科目が多くあります。
そのため、人気も高い宅建試験などを既に受験している人は被っている科目を既にある程度勉強済みという大きなハンデがある状態から勉強をスタートできるのに対して、
社労士は他の資格と被っている科目というのが少ないため、そのようなハンデがある状態からスタートできる受験生も少ないのです。
ただし、社労士試験には幾つかの受験資格が必要になります。
受験資格の1つに、行政書士試験の合格があるため、もし社労士の受験資格を取得していない場合は行政書士を取得して社労士の受験資格を取得するという選び方もアリですね。
行政書士と社労士の必要な勉強時間の目安は?
行政書士と社労士の必要な平均的な勉強時間は以下の通りです。
資格名 | 必要な勉強時間 |
---|---|
行政書士 | 600時間 |
社労士 | 1000時間 |
もちろん、この時間は目安であり、半分程度の勉強時間で合格する人もいれば、倍近い勉強時間を費やしても合格できない人もいます。
ですが必要な勉強時間を取っても社労士の方が難しいということがわかりますね。
行政書士と社労士の求人数で比較
転職・就職に関しては社労士の方が圧倒的に有利と考えてください。
むしろ、行政書士はほとんど役に立たないと考えて貰って構いません。
行政書士は基本的に独立・開業をしたい方向けの資格であり、行政書士の資格での求人と言うのは基本的には非常に少なくなっています。
企業側が行政書士を雇わなければならない状況があまりなく、行政書士試験で得た知識も実務的なものとは言いがたいためどうしても雇用と結びづらい点が多くなっているのに対して、
社労士ならば社会保険や労務に関する実務的な知識を既に社労士試験で獲得しており、総務部や人事部など一般企業での求人の歓迎要件に指定されている他、社労士事務所などの求人は行政書士事務所の求人に比べたらかなり多くなっています。
行政書士と社労士の年収の違いは?
行政書士と社労士は企業に雇用されるケースや副業として活動している方など、非常に多様な働き方ができる資格です。
とくに、行政書士と社労士は「開業向けの資格」と言われているため、簿記やFPなどとは違い、資格を取得しても就職せずに独立・開業をする人も多い資格です。
そのため、どちらの資格であってもお客さんがまったく来なくて収入がない人もいれば、軌道に乗って1,000万円を越える収入を得る人もいるため、なかなか平均的な数値は出にくいのが現状です。
厚労省などから公表されているデータや、各種求人などを見た平均的な年収としては、
- 行政書士:300万~500万
- 社労士:400万~600万
上記の価格が平均値に近い年収額だと思われます。
社労士の方が年収が高いのは、上記でも述べた通り社労士の方が就職・転職に強いため、収入も安定している人が多いの理由ではないかと思います。
行政書士と社労士のダブルライセンスを目指そう
行政書士と社労士は相性が抜群なことでも有名です。
そのため、ダブルライセンスで活躍する方も多いです。
社労士と行政書士はどっちから取るべき?
行政書士と社労士のダブルライセンスを目指すときに最も大きな悩みの種になるのが、行政書士と社労士はどっちから取るべきか?ということかと思います。
結論から申し上げますと、先に取るべきおすすめは社労士です。
社労士から取るべき理由は二つあります。
①社労士の方が就職・転職に強い
行政書士と比べると社労士は総務や労務など、一般企業でも需要が大きいですね・
残念ながらダブルライセンスを目指していても途中で挫折してしまう人も多く、社労士の資格さえあれば就職など潰しが利きやすいです。
②社労士の方が難易度が高いためモチベーションの維持が難しい
社労士の方が
人間の心理的に、壁を乗り越えて次の壁がさらに高いと気持ちが折れやすいですが、先に高いハードルを越えてしまえば比較的楽な気持ちで挑戦することができるためです。
行政書士と社労士の同時受験は可能?
社労士の試験が8月、行政書士の試験が11月と試験の時期が3か月程度ずれているため、同時受験自体は可能です。
ただし、上述した通り行政書士試験も社労士試験は難関試験であり、なんの対策もなく3か月間で行政書士試験を合格できるように勉強しようとすれば合格は難しいです。
そのため、勉強スケジュールをきちんと組んで挑戦する必要があります。
まとめ
どちらから受験しようか迷っていて、特にどちらの資格かこだわりがある訳でもなく、社労士の受験資格を持っている場合は社労士から受験することをオススメ致します。
業務内容では比較がしにくいですが、やはり社労士の方が就職・転職に向いていることを考えると将来的には安定しやすいためです。
しかし、この資格は前述した通り、非常に相性が良い資格としても知られており、両方を取得すれば独立・開業をした際もかなりのアドバンテージを得ることができるため、もし可能ならダブルライセンスを目指してみてもいいですね。